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茶話

仙台の老舗和菓子店「売茶翁」

売茶翁略傳

仙台には、「御菓子司 賣茶翁」という老舗和菓子屋があります。煎茶道では売茶翁と言えば言わずもがなですが、仙台の茶人の間で、こちらは大変有名なお茶菓子のお店です。

老舗和菓子屋「賣茶翁」

売茶翁_看板

「賣茶翁(ばいさおう)」は、仙台市青葉区「仙台市民会館」の向かいにあります。

街中でここだけ時間が止まっているかのような、凛とした雰囲気を漂わせています。電話番号が非公開なことで有名で、予約するにもお菓子を買うにも「直接お店に出向くしかない」という、昔ながらの商いを続けているお店です。

  • 御菓子司「賣茶翁
    • 住所:宮城県仙台市青葉区春日町3-1
    • 交通:地下鉄「勾当台公園」駅から徒歩15分
    • 電話:なし
    • 営業:9:30~18:00(喫茶室は10:00~)
    • 定休:毎月1日・16日

「賣茶翁」という店名の由来

売茶翁_鳴り物の「雲板」

禅宗の寺で使われる鳴り物の「雲板」を模した看板

店名の由来は、「創業者が賣茶翁に感銘を受け、店名として付けた」そうです。

創業は明治時代、元々は「甘泉堂」という屋号で旧東北電力ビルの裏手にありました。仙台空襲により昭和22年(1947年)に現在地に移転し、その時に屋号を「売茶翁」に改めました。

初代は売茶翁に心酔していて、坐禅の修行も経験し、朝に無料でお茶を振舞っていたこともあったそうです。店の入り口には、禅宗寺院で食事の時を告げる鳴り物「雲板」(うんぱん)を模した看板もありました。初代の思いが垣間見えます。

「手をついて 言上顔の 蛙かな」

売茶翁初代_渡邊僊爺

では、賣茶翁の初代はどんな人だったのか。

お菓子に同封されているしおりに、初代「渡邊僊爺」氏による「菓子造りつれづればなし」が書かれていました。

菓子造りつれづればなし

おもしろの月雪花うるはしの囲炉裏の集いに菓子ありて、その風情も興も一としほ深かるべけれさるにても、おのれよくぞ菓子造りに生れけるよ。

ただその造りたるを價ひにかわるものから、あきうどとのみ思はれんも詮方なけれど、ありやうはひとすじに菓子を作る職方にてあり。

大方のめでらるるものを造りいでむを、つとめとも楽しみとも亦甲斐ありとも思ふにぞあり。

されは、味にくわしき方々がみづから造り給はむ御手がわりと心得かざりをすて去り、ひたすらに風味第一と念じ、商売繁昌の才覚はさておきて、日々わざをはげみ良きが上にもいよいよよかれと精進致し、方々がことしげきおつとめの合の間、ホト一息のやすらひになくてかなはむ ちゃのみぐさにてありなむのねがひ、これぞ吾が家に傳へし「職人道」とて、此の夢ゆめ踏みはづれまじと思ひしむるになむ云わずもがなの内証ごとおぞましくもことあげして、世の笑ひ草にならむかと。

  菓子喫茶処 売茶翁

   菓子造り 初代 渡邊僊爺

菓子造りの職人として生まれた自負と決意がしたためられており、「職人道」として言上げしています。冒頭の「手をついて 言上顔の 蛙かな」の句は、この決意表明を表したもの。自らを蛙に例えてへりくだりながらも、強い職人魂が伺えます。

尚、お菓子の外箱の包装紙には、仙台の手漉き和紙「柳生和紙」が使われており、地元愛が感じられました。

銘菓「みち乃くせんべい」

売茶翁のみちのくせんべい

売茶翁の代表的なお菓子が、「みち乃くせんべい」(みちのくせんべい)です。

一枚ずつ和紙で包まれており、包みを開けると繊細な麩焼きのおせんべいが姿を現します。波照間産の黒糖蜜を薄く刷毛塗りしており、表面が結晶化して、まるで文様のようになっています。

売茶翁のみちのくせんべい

せんべいを一口かじると、香ばしさと共にパリッとした食感が。上品な甘味が広がり、ほろほろと口の中で解けていく繊細さ。お茶受けに合う優しい味のおせんべいです。

どら焼・宇治抹茶のかき氷「雪茶」

売茶翁は、みち乃くせんべいの他にも、季節の上生菓子、人気のどら焼き(1日65個限定)、夏に喫茶室で頂ける宇治抹茶のかき氷もおすすめです。かき氷には、「雪茶」という風流な名前が付いています(8月限定)。

ちなみに、近隣の洋菓子店「とびばいさ 甘座」(あまんざ)は、売茶翁の店主の息子さんが昭和43年(1968)に開いたお店です。売茶翁の飛び地という意味で、店名に「とびばいさ」と付いているそうです。

  • 洋菓子店「とびばいさ 甘座
    • 住所:仙台市青葉区立町26-15
    • 電話:022-263-7229
    • 営業:10:00~19:00 
    • 定休:無休
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