台湾茶の歴史を今に伝える「新芳春茶行」

新芳春茶行@台湾

新型コロナ・ウィルスで、なかなか遠方で出かけられできない状態が続いています。

そこで、コロナが落ち着いたら行ってみたい、お茶好きにおすすめの場所を紹介します。家でお茶を頂きながら、旅気分を味わって頂けましたら幸いです。

目次

麗しの島の茶「Formosa Tea」

19世紀、麗しの島の茶「Formosa Tea」(フォルモサ・ティー)の名で欧米に輸出され、人気を博した台湾茶。そんな台湾茶の歴史と文化を今に伝える、お茶の博物館「新芳春茶行」が、台北の「大稻埕」(ダァダオチェン)地区にあります。

世界に台湾茶を輸出した地「大稻埕」

油化街@台北
大稻埕の台湾式アーケード「亭子脚」。右手の豪奢な建物は、ビーガンレストランの如記蔬厨(素食美味餐庁)

新芳春茶行があるのは、観光名所の「迪化街」(ディーファジエ)で知られる大稻埕。レトロな赤レンガ作りの台湾式アーケード「亭子脚」(ティンアガ)が特徴的です。

大稻埕は海外貿易で栄えた地域で、乾物や漢方薬、布地などの老舗の問屋が多く、お店がひしめきあっています。通路にまで商品が山積みのお店もちらほら。台湾茶も、ここから世界に輸出されました。最盛期には、200軒以上の茶屋があったとか。

日本統治時代に建てられた赤レンガの建物や、外国人居住区だったこともあり、洋館も残っています。そんな中華風・洋風を折衷した街並みの大稻埕エリアの外れに、新芳春茶行はあります。

台北市の重要古跡「新芳春茶行」

かつて、台北最大の製茶工場と言われた「新芳春茶行」。

3階建て、約500坪の大邸宅。中国大陸の福建省から台湾に渡り、茶商となった王一家が、1934年に建設した製茶工場兼住居です。

歴史の流れとともに茶業を止め、その後、台北政府に寄贈され、大規模な修復工事が行われました。台北市の歴史的建造物(古蹟)に認定され、2016年にリノベーション、現在は無料公開されています。

台湾茶商の歴史と生活

新芳春行特別展

新芳春茶行@台湾

レトロな建物内では、当時の台湾茶商の生活と製茶の様子が、再現されています。

1階はイベントスペースで、お茶にまつわる展示がされており、定期的に展示内容が変わります。私が訪れた時は(※数年前)「新芳春行特別展」が開催され、新芳春行の歴史や、茶葉貿易の資料が展示されていました。

台湾茶の製茶風景
当時の茶の製造工程を再現した、ミニチュア模型
新春茶行の茶「梅雀」
かつて新春茶行が海外に輸出していた最高級の茶「梅雀」。

新芳春茶行ではもうお茶は作っていませんが、館内で台湾茶やレトロなお茶グッズが販売されています。当時のパッケージを復刻した、レトロなデザインのお茶も売られており、おみやげにも良さそうです。

先祖を祀る部屋「公媽廳」

新芳春茶行の住居部分

3階は、当時の豪商の生活風景を見ることができ、こちらは先祖の位牌を祀る部屋「公媽廳」。正廳とも言うそうです。仏壇にあたるものでしょうか。日本と同じく、木魚とリンが置いてありました。廟の中央には先祖の写真が飾られており、遠く故郷を離れ、台湾の地にやってきた一族の歴史が伺えます。

台湾には「善終」という言葉があり、「善く終わる」とは、善い死に方のこと。中華文化圏では、「寿終正寝」が理想の死に方とされてるんだそうです。それは、「自宅で家族に見守られながら、天寿を全うすること」。切実なものを感じました。日本における「畳の上で死にたい」にも、通ずるものがあります。

中国の歴史や、遠く故郷を離れた華僑の人達を考えると、それは現代よりも、きっとずっと難しく稀有なことだったのではないか、と。切実なものを感じました。

当時の製茶法が分かる「烘焙茶工廠」

こちらのエリアでは、かつての「炭火による焙煎工程」が展示されています。現在は機械を使った製茶が一般的ですが、この頃は手作業による「炭火焙煎」でお茶が作られていました。

茶の焙煎場「焙籠間」

焙煎室@新芳春茶行

昔ながらのお茶の焙煎室。赤レンガで組まれた丸い穴「焙窟」がいくつも空いており、ここが炉になります。

セイロのような大きな竹の網籠は、お茶の焙煎に使う籠の「焙籠」。煤をかぶり、小さい子供ならすっぽり中に入ってしまえそうな大きさです。

製茶の工程@新芳春茶行

こちらは、焙煎の工程の説明板(中国語と英語の2カ国表示)。

炉に木炭をたっぷり入れ、棒でつついて崩し、その上に米のもみ殻を被せ、完全に灰にします。1つの炉につき、60kgもの木炭を使用。その後、灰の上に「焙籠」を載せ、茶葉の火入れを行います。これは、福建の伝統的な焙煎方法なんだとか。

最盛期には24時間稼働していたそうで、暑い中お茶の世話をし、火力調整や焙煎を行うのは、重労働だったことでしょう。イラストの職人さんも汗だくで大変そうです。

こちらでは、壁に動画が投影されているので、焙煎の仕方がとてもわかりやすく、リアリティがありました。3D-CGで当時の様子を再現したもので、レトロな建物に最新テクノロジーをかけ合わせており、とても台湾らしい取り組みです。

茶の選別場「風選間」

こちらは風選機。風の力で、茶葉をふるいにかける機具です。これはミニチュア模型ですが、本物が展示してあります(うっかり撮り忘れてました)。自然の力を利用した、理にかなった道具

日本でも昔は、茶や稲や穀物の選別に、風選機の「唐箕」(とうみ)が使われており、博物館や郷土資料館などで見ることができます。以前、実演を見たことがあり、見事にふるい分けられていて、自然の力を利用した理にかなった作りに、これを発明した人はすごいなと感心したものです。

茶の鑑定場「穿心廊」

穿心廊@新芳春茶行

棟をつなぐ通路「穿心廊」。ここは、茶の品質検査をする場所だったそうです。

なぜ、通路で茶鑑定するのか。もしかしたら、茶の水色や香りの確認において、自然光かつ風通しのよい場所が適していたのかもしれません。以前、農家で小豆の選別の手伝いをしたことがあるのですが、「自然光でないと、正しい色の識別はできない。だから、選別作業は日暮れまで」と伺ったことがあります。

ミニチュア模型で製茶工場だった頃の茶検査の様子が、再現されていました。カップの茶の色もそれぞれ異なる細やかさ。茶の水色の確認に白い茶器を使うのは、昔も今も変わらないですね。

おわりに

台湾茶葉

大稻埕は老舗が今も残る一方で、リノベーションしたカフェや雑貨店なども増えており、新旧が入り交じる活気あるエリアです。

新芳春茶行の2階も、2019年5月にリノベーションされ、「別境書房」という書店&カフェになったそうです。古い建物を活かしたレトロモダンな作りで、台湾の茶の歴史や文化に関する書籍も取り扱っています。また近くに、今も昔ながらの炭火焙煎で製茶している、老舗茶屋「有記名茶」がありますので、こちらに足を伸ばすのもおすすめです。

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