今年最後の煎茶道のお稽古に。12月はいつもあっという間。「心を亡くす」と書いて忙しいとは、なりたくないもので。
十二月の異称
稽古場までの道。イチョウの葉が散り、緋毛氈ならぬ黄毛氈。12月の別名は「師走」が最も有名だが、様々な呼び名がある。
- 窮月(きゅうげつ)
- 極月(ごくげつ)
- 蠟月(ろうげつ)
きわまる月は終わりを感じさせるが、蠟は労にも通じ、この1年を労わっているようにも思える。
なかなかに 心をかしき 臘月哉 (松尾芭蕉)
松尾芭蕉は、蠟月に「しわす」と読みを当てて12月の一句を。昔の人も、慌ただしく過ごしていたのだろうか。
それを「おかし」と感じる心の余裕がほしいもの。
宝庵の庭の花々
ぐるりと回って、入り口へ。つくばいのそば、水仙の蕾がふくらんでいた。冬の寒さの中でけなげな姿。
こちらも可憐な白椿。淡い色のおしべ&めしべがしっとりとした雰囲気で、気品がある。
秋の名残
秋には黄金色だったススキも、色が褪せ。これから綿毛が落ちて枯れ尾花、箒のような姿になっていく。
蕾の水仙(走り)、花開いている白椿(盛り)、ススキ(名残)、季節は移ろいゆく。
冬のお手前「啜り茶」
今月は、煎茶のお手前の啜り茶(すすりちゃ)。
湯を注ぐ時、直接茶葉に湯があたらぬように気を付けて。二煎目は湯を入れた回しの急須をお客様の元に。色々と煎茶のお茶会に参加すると、二煎目はお運びさんが注ぐ場合、客人が自分で注ぐ場合の両方がある。
清めのお道具「羽箒」
啜り茶では、扇子ではなく羽箒(はぼうき) を用いる。炭手前で、涼炉を掃き清めるのに使うもの。
鶴や雁、色々な鳥の羽根を見るが、その歴史など詳しいことをよく知らない。参考になる情報はないものかと調べた所、今年の9月に、羽箒についての書籍が出版されていた。
茶の湯の羽箒 知られざる鳥の文化誌 [ 下坂玉起 ]
茶の湯とバードウォッチングを趣味とし、羽箒の研究をただ1人続けてきた著者が、20年余りの調査を通して「発見」した羽 箒に関する数々の事実や興味深い情報を一冊にまとめます。
「茶の湯の羽箒 知られざる鳥の文化誌」紹介文より
茶道の羽箒の本だが、煎茶道でも参考になるに違いない。茶と鳥。それぞれの分野に精通している方だからこそ、記すことのできた書籍。強みはかけ算とつくづく思う。