煎茶稽古|2018年文月

宝庵の茶室_常安軒

連日、厳しい猛暑が続き、じりじりと灼けるような日差し。

京都の祇園祭の「花笠巡行」は、酷暑により異例の中止に。日本救急医学会からは「熱中症予防に関する緊急提言」が発表されている。

頭がぼおっとするような熱気の中、蛙に代わってセミの鳴き声。

七月の宝庵

北鎌倉 宝庵

先月・先々月と豪雨だったのが、夢だったかのような快晴。

道すがら、紫色の紫陽花が咲いていた。夏のひだまりは眩しくて白ずんで見える。

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高麗門から梅見門へ

北鎌倉駅から、昔ながらの郵便ポストの横を曲がり、浄智寺さんに向かう道へ。ここまで来ると、もう空気が異なる。緑陰は少し涼しい。参道の入口には、甘露ノ井。高麗門をくぐり、左手の小道を抜けて宝庵への道へ。

今度は梅見門をくぐると緑濃く草が生い茂り、茶室「常安軒」までの露地は、緑のトンネルのよう。

茶室 常安軒

夏のお手前「冷煎」

 夏のお手前「冷煎」

今月は、氷を使った季節のお手前「冷煎」。

冬の「啜り茶」と同様、フタ付のすすり茶碗を用いる。茶碗の中には、氷。

氷の上から湯で淹れた玉露を注ぐという、オン・ザ・ロックの茶のお手前。

トング形の竹の箸で氷をつかみ、茶碗にいれるのがとても難しい。暑さで氷も汗をかき、どんどんと小さくなっていく。つるつると滑っては、箸から氷が逃げていく。

茶碗の縁から顔を出すくらい、たっぷりと氷をいれた後、玉露を上から絞るように注いでいく。

冷煎_茶碗

茶を口に含めば、玉露の濃厚な旨味。

徐々にじんわりと氷が溶けていき、ひんやりすっきりとした味わいに。暑さがすうっとひいて、生き返る心持がする。

竹の折箸

冷煎で用いるのは、二本の箸ではなく、1本の竹を折り曲げた「折箸」(おりばし)。

折箸は、新嘗祭で神饌にも使われる、神様に食べ物を取り分ける神器だとか。

今日、箸といえば二本一組の箸を想像するが、弥生時代から奈良初期にかけての一時期、『折箸』といって竹を折ってピンセット状にした箸が使われた。

これは竹を細く削り、その一本の竹を中央部から折り曲げ、両端を向かい合わせたものである。

※出典:箸の本(本田総一郎 著 1978年)

物数を尽くすこと

盆巾の扱い、お道具との距離と姿勢。

お道具を右手に取り、左手で迎えに行く。水を注ぎ、左手で見送りながら、元の位置に戻す。

季節のお手前は、どうも手順やお道具の異なる部分に意識がいきがち。1つ意識しては1つ意識が抜ける。

物数を尽くす」とは、能の世阿弥のことば。意識して、頭の中で色々考えているうちは、まだまだ稽古が足りていないのだなあと思う。

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