2018年4月、煎茶道 黄檗売茶流 鎌倉教室の稽古録。
稽古場への道のり、シャガの花が一面に咲き誇る。緑に白が映え、はっとする美しさ。別名「胡蝶花」(こちょうか)。はなびらを蝶に見立てた名前だろうか。
宝庵 稽古始め
今月から、稽古場が「北鎌倉たからの庭」から「北鎌倉 宝庵」に。
先月のお茶会の時はじっくりと見れなかったので、いつもより早めに稽古場に足を運び、宝庵の敷地内をぐるりと見学。
稽古場の茶室「常安軒」
煎茶道の稽古場は、3月にお茶会を行った「常安軒」。
大きめの畳8畳が敷かれ、床の間も1畳ほどのサイズと、広々とした空間。立礼は空間を狭く感じがちなので、この広さはとてもうれしいもの。
お茶室の隣には、随分と立派な巨石と池が。若葉が芽吹き、新緑の美しい季節。
露地を猫が通りがかり、鶯が鳴く。この日の鳥たちは随分とにぎやかで、日暮れまで鳴いていた。夕方には、寝床に帰るカラスの鳴き声が辺りに響き、鳥の声で時の流れを知る。
お茶室の裏手には、荒々しい岩壁が広がる(「切り岸」と呼ぶそう)。今は水は流れていないが、岩肌の間には滝の跡。常安軒の横まで、小川をひいていた跡が残る。
ふと、以前、足を運んだ新宿区中井の「林芙美子記念館」を思い出し、(もしや…)と帰宅してから調べた所、こちらも宝庵と同じく山口文象さんの設計で、なるほどと得心。
箱手前
今月のお稽古は、箱手前。前回お稽古したのは、いつのことだったか。
稽古帳をめくった所、前回は2016年6月と2年ほど前のこと。「久しぶり」というよりも、「初めまして」に等しい感覚に。新鮮な気持ちで臨むことができる、と前向きにとらえることとする。
茶箱は、野点(のだて)に使われるお道具で、箱の蓋がお盆となる。
箱の中から、煎茶道具が次々と出てくるお手前で、人気が高いそうな。今回は大きな平成茶碗、古式の小さな煎茶碗6碗の時もある。道具組が変わると、手前座の景色がガラリと変わる。
土台となる姿勢の取り方
足運び、お道具の通り道、布の扱い方、姿勢の話。これまでも「姿勢の話」は先生から何度も伺っていたが、この日は「能のカマエに似ている」という気付きが。
「骨盤を前傾に倒し、軽く膝をゆるめる」
「肩甲骨を寄せて、胸を開いて肩を降ろす」
「頭のてっぺんを、天井からまっすぐ吊るされている」
膝をゆるめることで、重心が下がり、身体が安定する。上体がぶれない軸ができる。この身体感覚は、やはり着物の方が分かりやすいし、綺麗に見える(恐らく、洋服で膝をゆるめて歩いたら、あまり美しくは見えないはず)。
そして、子供の時分、合唱団に居た頃に「頭のてっぺんを、糸で吊るされているように」と、幾度も指導されたことを思い出す。
正しい姿勢を取ると、身体全体が楽器となり、指先まで声が響く。反面、少しでも歪みや崩れあると、声がくぐもり、響かない。子供ながらに不思議だった。
稽古中、1つの事柄に対し、頭の中で色々なことが芋づる式にあふれ出ることがある。一見、全く関係がなさそうな分野も、閃きにも似た感覚で突然つながり、とても面白い。外からは、ぼんやりしているようにしか見えない状態ではあるけれども。
この日、お稽古が終わったのは夜の8時過ぎ。昼の1時に伺ったので、なんと7時間が経過していた。これまでで最長かもしれない。新しい稽古場になり、先生も気合いが入っていたのだろうか。