世田谷某所にあるお茶室「妙深庵」にて、煎茶と抹茶の2つの茶席を楽しめる「浴衣茶会」が開催されました。各席、趣向を凝らした夏の設えと美味しいお茶を頂きました。
煎茶席|方円流
煎茶のお席は、冷茶の茶櫃手前。
ガラスの茶碗が涼しげ。お茶は玉露で、八女と宇治の茶葉をブレンドしたもの。2:8、3:7など、お稽古でも配合を変えて楽しまれているとのこと。
じりじりと暑い日、ひんやりとしたお茶を頂き、生き返る心持ちに。
お菓子は、自由が丘の「蜂の家」特注で、銘「祈り」。
涼しげな見た目に、中には五色の手鞠のような梅餡。すっきりとした味わい。金粉がさりげなくのっており、金彩のガラス茶碗と呼応しあう。お菓子を頂いた後、二煎目を頂き、一煎目との違いを味わう。
七夕にちなみ、水指には梶の葉蓋、床の間の花入にはサトイモの葉が。
「サトイモの葉にたまった夜露で墨をすり、梶の葉に和歌や願い事を書いたことにちなんで」とのこと。
七夕で梶の葉が使われる所以は、「梶が、天の川を渡る船の舵に通ずる」と聞いたことがある。そのため、織姫は「梶の葉姫」とも呼ばれる。
水指を上からのぞきこむと、下紙の金がガラス越しに透けて見え、泳いでいるように見える趣向。瓢杓は持ち手が管になっており、細い持ち手の先から水を注ぐ形状のもの。水音で涼を呼ぶ。
そして、杓置きは朝顔。別名、「牽牛花」(けんぎゅうか)。織姫と彦星の二星がそろう趣向。
床飾のお軸は蓮にカワセミ、水盤を泳ぐ鮎。
鎌倉彫の波文様の結界は二陽堂 三橋鎌幽、繊細な竹組の茶櫃は前田竹房斎の作。
煎茶のお道具は種類も多く、見ているだけでも楽しい。
抹茶席|表千家
世界茶会の岡田先生の社中によるお抹茶席は、グランドピアノのあるサロン的空間にて。
こちらも立礼のお茶席。棚は裏千家16代・坐忘斎家元好みで、「和親棚」と言うそう。棚板の形は、〇△□の3種類があり、本日は四角いものを。
3つの机は高さがそれぞれ異なり、入れ子になる形式とか。禅宗の応量器のよう。
お茶席のテーマは、「夏の風物詩」。
床の間には、鮮やかに彩られた蓮の葉を、花火に見立てた額。元々のお茶室の設えという、黒地に雲がかった壁が夜空のようで、まるで誂えたかのようにぴったり。
モノトーンを基調としたモダンでシックな設えに、お菓子がびっくり。
草履形の「KABKU~へん」!(かぶくーへん)
歌舞伎座の新装開店記念で作られたお菓子だそうで、花魁道中の高下駄をイメージしたもの。
渋めの設えの中、紅一点のようなポップさ。
冷茶で喉を潤し、涼しくなった後で、食べ応えたっぷりのお菓子と暖かい抹茶を頂き、ちょうどよい塩梅に。
イチイの木の飛騨一刀彫の茶杓、甲子園にちなんだ千羽鶴の棗。ギヤマンの水指は、ルネ・ラリックのガラスのボール。
帰り際、待合に掲げられていた上村松園の美人画。
よくよく見ると、絵の女性の視線の先には、小さな蛍が。甘い水(玉露)に呼ばれたのか。
色々な趣向が凝らされ、夏の設えを最後まで楽しませて頂いたお茶会でした。