北鎌倉宝庵 椿茶会 2018

宝庵茶会

この春、北鎌倉の浄智寺の奥に茶室「北鎌倉 宝庵」が開かれます。

3/24[土]~3/25[日]の2日間、「北鎌倉 宝庵」のお披露目茶会が開催され、表千家の「抹茶席」と黄檗賣茶流の「煎茶席」が設けられました。

北鎌倉 宝庵について

北鎌倉宝庵

宝庵の入り口。苔むした梅見門を通って露地へ。

「北鎌倉 宝庵」は、昭和9年に文人ジャーナリストの関口泰が建築、戦後モダニズム建築運動のリーダー山口文象が設計を手掛けたお茶室です。

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茶室「夢窓庵」「常安軒」

敷地内には2棟のお茶室があり、京都・高台寺の遺芳庵を左右逆写しとした、茅葺草庵の「夢窓庵」。八畳と四畳の二つの茶室を持つ数寄屋建築の「常安軒」、そして広い露地を持つ本格茶室です。

これまでは個人所有の茶室で、「旧関口邸茶席・会席」と呼ばれていたそうです。2017年に鎌倉古刹の浄智寺の所有となり、浄智寺の山号「金宝山」から一字を取り、茶室「宝庵」として、今年の春から一般公開されることになりました。

一台畳目の「夢窓庵」。写真では見えませんが、吉野窓があります。

北鎌倉・谷戸の地

実はいつも前を通りがかって、苔むした門を見ては、とても気になっていたのです。

この度のお茶会で初めて門をくぐり、足を踏み入れた所、そこにはとても素敵な空間が広がっていました。

入り口からは想像できない広々としたお庭に、古木と巨石を配した池。

お茶室の裏には、どっしりとした岩肌の山。草の間にひっそりと潜む、一匹の狸の置き物。

上の方には、椿をはじめ、木々が力強く岩に根付いていました。豊かな自然に恵まれたこの地にお茶室を建てた気持ちが、とてもよく分かりました。

このような場所で、お茶会(しかもお茶室開きの茶会)を開くことができて、とても幸せです。

黄檗売茶流 煎茶席

宝庵茶会_すすり茶手前

2日間に渡るお茶会。今回は日替わりでお手前を変え、初日は玉露、二日目はすすり茶をお出ししました。

私は今回は水屋を担当し、2日目はお手前も経験させて頂きました。初日の一席目は特に緊張しましたが、「お茶が美味しかった」という声を頂き、ほっと胸をなでおろしました。

両日共にお天気に恵まれ、おかげさまで毎席ほぼ満席に。お抹茶席も盛況だったようです(余裕があればお茶席にお邪魔したかったのですが、入れなくて少し残念)。

庭には途中リスも顔を出し、木々の間を跳躍しては、鳴き声が響かせていました。

宝庵茶会

お菓子は日替わりで。初日は赤坂青野の三色団子、二日目は、鎌倉手鞠の生菓子「椿」

天地無私春又帰

天地無私春又帰

「天地無私春又帰」お家元の祖父・道元猊下の書。万年青に宝庵に根付けますように、との願いを込めて。

床の間に掛けられたお軸は、黄檗宗52代管長 道元仁明猊下の「天地無私春又帰」(天地に私(わたくし)無く、春また帰る)。

天地は公正無私であり、春はすべての人に等しくやってくる。

時と自然の平等さを説いたものですが、どんな過ごし方をしても、時は流れゆく訳で、ふと昨年・一昨年の春の自分に思いを巡らせ、(少しでも成長しているのだろうか)とお軸を前に自問していました。

毎年、同じ時節にお茶会があると、過ぎていく時間に対し、一歩立ち止まって振り返るよい機会となります。時の流れは、過去から未来への一方通行ではなく、まるで螺旋のようです。

お茶の美味しさの考

煎茶急須(平安春峰)

白磁 花唐草紋の煎茶急須(平安春峰 作)

お茶会でよく思うことは、「自宅で飲むお茶より、お茶会で飲むお茶の方が美味しいのは、なんでだろう」ということです。お茶会で使う同じ茶葉で家で淹れていても、やっぱり違うのです。

お茶の美味しさを決めるものは、「茶葉・水・温度」と言います。また、お茶を淹れるお道具や淹れ方・淹れ手も、もちろん関係するでしょう。

ただ、果たしてお茶そのものだけが、美味しさを決めるものなのでしょうか。

自分自身を振り返り、お客さんとしてお茶席に入った経験を考えると、お茶のおいしさを決める要因は、実は飲み手側にもあるのでは、とそういう風に思い至りました。

お手前は「動の瞑想

金襴手 仙盞瓶の水注

金襴手 仙盞瓶の水注。赤地に金で鳳凰が描かれている、豪華な水柱です。

お稽古をしていると、座禅が「静な瞑想」であるとすれば、お手前は「動の瞑想」であると感じることがあります。そして、お手前には、お手前をする側だけでなく、見る側にも、その瞑想効果があるように思います。

お茶会もそうですし、他の方のお手前中、見取り稽古をしている時にも、頭の中がしん、と静まる感覚がするのです。

お茶席に入ると、整えられた空間の中で、お手前を見ることで、心が整い、五感がより鋭くなる気がします。そのため、より一層お茶の味を感じることができるのではないでしょうか。

その場にきちんと居ると、そのような効果があるように思います。

宝庵茶会 煎茶席「すすり茶」

逆に、気がかりなことが頭を占めていたり、身体にどこか痛みを抱えていたり、気が急いている時は、心がどこかに行ってしまっていて、お茶をよく味わえていなのかもしれません。少なくとも、私はそうした経験があります。

一煎のお茶を味わう、気持ちの余裕を持っていたいものです。

黄檗売茶流 鎌倉教室

宝庵茶会_ボーフラ

日々の生活の中、とても忙しくて、頭の中が考えることで一杯で、耳から流れ出すのでは…と、全く心が落ち着かない時がたまにあります。

そんな(今日はお稽古に行っても、身が入らないかもしれない…)と思うような時でも、いざお稽古に行くと気持ちが整い、帰る頃にはもうすっきりした気分になり、「ああ、来てよかったなあ」と思うことがしばしばです。

4月より宝庵が稽古場に

これまで、「北鎌倉 たからの庭」で開催されていた、煎茶道のお稽古。

4月より、黄檗売茶流 鎌倉教室のお稽古はこちらの宝庵となります。今からとても楽しみです。

花屏風の桜

お家元考案「花屏風」に生けられた桜。最後のお席では、つぼみが数輪、花開いていました。

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