茶筅塚、筆塚、針塚、包丁塚など、日本には道具を供養する様々な塚があります。煎茶に関わる塚として、急須を供養するための珍しい「急須塚」が宮城県仙台市のお寺にありました。
伊達家ゆかりの古刹|慈雲山 資福寺( 資福禅寺)
資福寺は、宮城県仙台市にある済宗妙心寺の寺院。伊達家ゆかりの禅寺「北山五山」の1つです。
元々は鎌倉時代に出羽国(山形県東置賜郡高畠町)に創建されたお寺で、伊達家の移動に伴って数度移転し、慶長5年(1600年)、名僧と名高い虎哉宗乙(こさいそういつ)禅師が現在の地で中興開山しました。 虎哉禅師は、伊達政宗公の師として、幼少の頃から教育係を努めたことで有名です。
「あじさい寺」として有名な花の名所
地元では「紫陽花寺」として有名で、毎年6月下旬~7月頭の梅雨の時期、参道や境内に紫陽花が咲き乱れます。この時期にあわせ、通常は入れない小書院にはお抹茶の茶席が設けられます(※2020~2021年は新型コロナの関係で中止)。
資福寺の古木「七香木蓮」
境内には、幹が7本に分かれていることから 「七香木蓮」 と呼ばれる、樹齢300年を超える立派なハクモクレンの木があります。紫陽花の頃に、とても大きな白い花を咲かせます。
資福寺の「急須塚」
針供養や筆供養などの同様に、道具への感謝のきもちを込めて急須を弔ったものが急須塚です。 訪れたこの日は、花がたむけられていました。
古来、日本では長い時を経た道具には霊魂が宿ると信じられていました。場合によっては「付喪神」(つくもかみ)となり、悪さをすることも。無生物であるモノにも命が宿り、 モノは単なるモノではなくそれ以上の存在になる。これは日本人独特の感性かもしれません。
仙台の煎茶道4流派による寄進
石の裏側に「御寄進」として、寄進された煎茶道の流派名が記載されていました。煎茶道にとって急須はなくてはならないもの。各流派の持ち回りで「急須塚供養茶会」も開催されているようです。
- 三彩流
- 織田流
- 東阿部流
- 文雅静庵流
- 平成八年四月七吉日
おわりに
モノにも敬意を払い、人や動物と同じように感謝と別れをする。それを忘れないように石碑を建立して供養を行う。
お役目を終えた急須を供養することで、改めて「道具を丁寧に扱う」という意識を持ち、お茶との向きあい方を自省できるいい機会となるのかもしれません。
なによりも愛用の道具が壊れた時のきもちたるや。もう使うことはできないと分かっていても手放しがたく思うもの。道具を供養することで、自分のきもちも成仏するでしょう。供養とは相手のためだけでなく、残された人のためのものでもあると思います。