\
茶文化

台湾の国立故宮博物院南院|アジア茶文化展①中国の茶文化

唐の時代の茶器

台北の故宮博物院の分館として、2015年に開館した故宮南院。

正式名称は「国立故宮博物院南部院区 アジア芸術文化博物館」と長く、とても覚えられない。アジアの芸術文化に特化したミュージアム、茶文化の常設展示があるとのことで訪問してきた。

国立故宮博物院 南部院区

国立故宮博物院南院

国立故宮博物院南院は、時間ごとに入場者数を制限しており、サイトから予約するシステム。

個人の場合、予約せず当日入場もできるが、せっかく行って入場できなかったら悲しいので、予約をして臨んだ。ホームページから日本語で予約でき、当日はメールで届く予約票を見せるだけなので、とても簡単。

尚、北院のチケット(3か月以内)を提示すると、無料で入場できる。

故宮博物院南院までのアクセス

台北から新幹線に載ること約1時間30分、台湾中部の嘉義駅で下車。

嘉義駅前はタクシーの勧誘が多い。聞けば値段は100元(35o~400円くらい)。バスは約20元なので、複数人ならタクシーでいいかもしれない。ちょうどバスが来たので乗りこみ、5分ほどで故宮に到着。

ちなみに新幹線の嘉義駅と地下鉄の嘉義駅は離れており、バスで30分ほどかかる。知らずに間違えたら悲しいことになる。

故宮博物院南院

広大な敷地、バス停から博物院までそこそこ歩く。巨大な人工池にかけられた橋を渡り、10分くらいだろうか

有料でカート型のシャトルバスが走っており、博物院内にコインロッカーもあるが、スーツケースなどの大型の荷物は駅に預けた方が賢明かもしれない。

故宮博物院の外壁

仏像の螺髪にも、鱗のようにも見える外壁。

音声ガイドによれば、アジアを代表する動物「中国の龍・インドの象・モンゴルの馬」を取り入れたデザインだそう。流線形の橋も、龍の体を表しているのかもしれない。

故宮南院の館内

館内も、曲線を多用した造り。これは、建築するのがとても大変だったと思う。

2016年から館内の写真撮影が可能に

昔は写真撮影NGだったが、南院も台北の故宮同様、写真撮影OKとなっていた(2016/2/1より)。

南院ホームページに日本語の案内ページがないため、分かりにくいのだが、北院ホームページに同じ内容が日本語で掲載されている。なので、こちらを見るとわかりやすい。

五、展示場内では写真と動画の撮影ができますが、カメラや携帯電話のフラッシュ、撮影用照明機材、三脚、自撮り棒などの使用は禁じられています。

撮影禁止の展示品には個別に注意書きがありますのでご注意ください。撮影中は他の観覧者の妨げにならないようにしてください。また、危険のないよう十分にお気をつけください。
商業用の撮影や特殊な目的のある方は必ず事前にお申し込みください。

ご来館の皆さまへのお願い(国立故宮博物院)

写真撮影OKな美術館や博物館が、どんどん増えている。これも1つの時代の流れだろうか。

また、台湾の故宮博物院は、収蔵品のオープンデータ化も進めており、オンラインミュージアムのように展示品をネット上で見ることもできる(ダウンロードして無料利用も可)。

故宮博物院南院の常設展

故宮南院の常設展

南院は、以下の5つのテーマで常設展示が設けられている。ただ、今回「アジア織物展」は休止中のため、見ることができなかった。

  1. 嘉義発展史
  2. アジア織物展
  3. アジアの仏教芸術
  4. アジアの茶文化
  5. アジアの理解(ニューメディアデジタル)

地元の方だろうか、「嘉義発展史」を熱心に見ている方が多く、印象的だった。館内はとても広く、台北本館と違って混みあっていないので、ゆっくりと鑑賞できる。

アジアの茶文化展「芳茗遠播」

アジアの茶文化展_国立故宮博物院南部院区

常設で、アジアの茶文化を紹介する「芳茗遠播」。展示は、3つのコーナーに分かれていた。

  1. 茶郷「中華茶文化」
  2. 茶道「日本茶文化」
  3. 茶趣「台湾工夫茶」

まずは、一つ目の展示に。

茶郷「中華茶文化」

中国茶文化_国立故宮博物院

茶郷「中華茶文化」コーナーは、中国の茶文化と茶道具の変遷を辿ることができる。

唐代の茶文化|煮茶法

唐時代の煮茶法

各時代の喫茶法が図で描かれており、とても分かりやすい。こちらは、唐時代の茶の淹れ方。

  1. 餅茶(固定茶)を火であぶる
  2. 薬研(やげん)でひき、細かく砕く
  3. 砕いた茶葉をふるいにかける
  4. 湯を沸かして、茶を煮出す
  5. 茶をスプーンで攪拌し、泡立てる
  6. 茶碗に注ぐ

餅茶をすりつぶし、ふるいにかける。湯花とは、お湯に浮くあぶくのこと。図には書かれていないが、陸羽の茶経によれば、塩も入れていた。

唐代の茶器

石箪柄壺(唐時代)

石箪柄壺(唐時代)stone tea ewer with single handle(618-907)

 

長沙窯_緑釉箪柄壺(唐時代)

緑釉箪柄壺(唐時代、長沙窯) Ewer in green glanze(618-907)

煮茶法の図には登場しないが、日本の急須によく似た横手の茶器「側把単柄壷」が展示されていた。唐代晩期に流行した形とか。こちらは、蓋に紐を通せる穴がついている。展示数が少なかったのが残念。

宋代の茶文化|点茶法

 宋時代の点茶法

日本茶道の元となった、点茶法。唐時代と違い、宋になると石臼と竹のササラのような茶筅が登場。より細かく茶を粉末にできるように。

また、火にかけたままの煮出し茶から、茶碗に茶と湯を注いでかき混ぜる方式へと変わっている。

  1. 団茶(固形茶)を砕く
  2. 薬研&石臼で、茶を粉末状にする
  3. 粉末にした茶をふるいにかける
  4. 茶缶にいれる
  5. 茶碗に粉末茶をいれる
  6. 湯を茶碗に注ぐ
  7. 茶筅で攪拌する
  8. 茶碗を天目台(※天目茶碗をのせる台)にのせる

宋代の茶器

南宋宮窯の茶碗

青瓷青葵口茶盞(南宋・宮窯)Hibiscus-shaped tea bowl in light bluish-green glaze(1127-1279)

宋代の茶器は、日本人に馴染み深いものが多い印象。

耀州窯_青瓷印花菊花文茶碗(宋時代)

青瓷印花菊花文茶盞(宋時代・耀州窯)Pair of Tea bowls in olive green glaze with impressed chrysanthemum decor(960-1279)

こちらは2個セットの茶碗。無地の外側に対し、内側は凝った意匠が施されている。

この頃の茶碗は「茶盞」(ちゃさん)と呼ばれている。英語ではTea bowl。だいぶ印象が異なる。

醤釉兎毫文茶盞(南宋時代・建窯)

醤釉兎毫文茶盞(南宋時代・建窯) Tea bowl in brown with hare’s – far striations(1127-1279)

日本では、「禾目天目」(のぎめてんもく)」と呼ばれる茶碗。茶碗の表面を流れた釉薬の細かい筋を、稲の穂先の芒(禾)に見立てたことから。

黒釉木葉紋茶盞(南宋時代)

黒釉木葉紋茶盞(南宋時代・吉州窯)Tea bowl in black glaze with leaf pattern(1127-1279)

木の葉文様の茶碗。大阪市立東洋陶磁美術館で、よく似た茶碗を見たことを思い出した。調べた所、「木葉天目茶碗」だった。本物の桑の葉が焼き付けられており、桑は禅に通ずる植物。

黒釉木葉紋茶盞_茶托

黒釉木葉紋茶盞(南宋時代・吉州窯)Tea bowl in black glaze with leaf pattern(1127-1279)

横から見た図。天目台と天目茶碗。

「盞」とは杯のこと。なので、金盞と言えば黄金の杯。花の世界では、水仙の異名でもある。確かに水仙の花は、天目台に茶碗がのっているような姿をしている。

明代の茶文化|泡茶法

明代の泡茶法

日本の煎茶道の元となった、泡茶法。唐宋の時代までは煎じて飲んでいたが、初代皇帝・洪武帝(朱元璋)が「団茶禁止令」を発令。ここで、中国の喫茶法は大きく変わる。固形茶を煎じる喫茶法から、茶葉(散茶)に湯を注ぐ喫茶法へ。

  1. 涼炉で湯を沸かす
  2. 竹の茶合で茶葉をはかる
  3. 茶葉を茶壺(ティーポット)にいれる
  4. 茶壺に湯を注ぐ
  5. 茶碗に茶を注ぐ
  6. 茶壺と茶碗
煮茶図(明時代)

隠居十六観之六一譜泉(明、陳洪綬(1598-1652))

明代の喫茶図

煮茶図(王問、明の嘉靖37年、1558)

明の喫茶図。茶の淹れ方が変われば、茶器も変わり、茶壺(ティーポット)が使われるように。

明代の茶器

青花のティーポットと銀の茶碗(明時代)

青花高士圓六稜堤梁茶壺、青花白地玲瓏銀裡茶鍾(どちらも明・萬暦時代)Hexagonal teapot in underglaze blue with gentleman amid a landscape decor /Teacup in underglaze blue with pierced lattice on a silver ground(1573-1620)

七宝つなぎに似た意匠の銀の茶碗と、青花のティーポット。注ぎ口が面白い形。ずんぐりとした胴体に対し、細長く心許ない。

明代の茶碗

門彩團花果紋茶杯、青花紅彩花弁茶鍾×2個(どちらも明・成化時代) Teacup in doucai enamels with flowers and fruits decor / Pair teacups in underglaze blue and overglaze red with flower decor

明の時代の茶碗は、「茶鍾」(ちゃしょう)と書かれているものが多い。

茶碗の呼び名は様々あり、名のゆらぎも多いのだが、ざっくりわけると故宮では「唐宋は茶盞(tea bowl)、明清は茶鍾(teacup)」の呼称が多かった。

茶碗(明時代)

左から、甜白発砲茶鍾、青花高士圓茶鍾、青花雲流紋茶鍾、白瓷暗龍花茶鍾、霽青茶鍾(全て明時代・嘉靖)

茶筅で泡立てなくなったためか、茶杯がとても小さくなっている。茶の淹れ方が変われば、道具も変わる。

白磁の茶碗は、今すぐに使えそうな清潔さを保っている。一番右の「霽青茶鍾」がとても美しかった。「雨が止んだ青」(霽青)とは、雨上がりの青空のことだろうか。深い綺麗な青。

明代の茶器

五彩雲流紋茶葉罐(明・萬暦)、蛍白扁柄圓茶壺(明・徳化窯)、青花赤壁賦茶鍾×2個(明末清初)

中国語で茶壺はティーポットのことなので、ちょっと頭が混乱する。この時代、茶葉を収納する容器は「茶葉罐」という名称。

清代の茶文化|泡茶法

清代の泡茶法

清代になると、茶こしと蓋碗が登場。工夫茶など他の喫茶法もあるが、時代を代表する飲み方が紹介されている。

  1. 湯を沸かす
  2. 竹の茶合で茶葉を測る
  3. 茶壺(ティーポット)に茶葉をいれる
  4. 茶壺に茶葉をいれる
  5. 茶こしを使い、茶碗に茶を注ぐ
  6. 蓋碗

唐代の茶器

清時代の茶壺

青花瓜瓞綿綿蓋罐×2個(清)、青花山水人物六方茶葉罐(清、康熙帝時代)

茶入、煎茶道具でいえば茶心壺。こちらも綺麗な青。瓜をかたどった、ふっくらとした曲線も美しい。

雍正帝時代

清・雍正帝時代の茶器

瑠璃茶杯及茶盤、瑠璃茶鍾、門彩緑竹茶鍾、茶葉末茶壺(全て清・雍正帝時代)Agate teacup and tea tay/Agate teacup / Teacup in doucai enamels with green bamboos decor / Teapot in tea dust green glaze(1723-1735)

清・雍正帝時代の茶碗とティーポット。瑠璃杯の薄さ!

乾隆帝時代

清時代のティーポット

左:洋彩盤蓮紋藍地方壺(乾隆帝時代)右:白玉方壺 Square teapot in yangcai enamels with Indian lotuses decor on a turquoise blue ground(1736-1795) / White jade teapot(17th-18th)

清時代の四角いティーポット。玉の茶器は中国だけではないだろうか。この他にも茶碗や茶托など、数多くつくられている。

洋彩の茶器(清・乾隆帝)

洋彩錦蓮紋紅地茶壺(清・乾隆6年) 、洋彩錦上添花紅地茶鍾(清・乾隆7年) Teapot in yangcai enamels with incised red ground pattern of flower brocade(1741)/ Pair teacups in yangcai enamels with incised red ground pattern of flower brocade(1742)

乾隆帝時代のエナメル茶器は、土産屋などで写しをよく見かける。

この他にも、清時代の茶器が多く、玉の茶碗やチベットから献上された茶碗なども展示されていた。全体としてコンパクトにまとまっている展示だが、茶器が好きな人にはたまらない内容かとも思う。

洋彩万寿無彊花蝶蓋碗(清時代)

洋彩万寿無彊花蝶蓋碗(清・道光時代) Lidded bowl in yangcai enamels with Chinese wisterias and birds decor on a turquoise blue ground(1821-1850)

この蓋碗はとても綺麗だった。記事がとても長くなってしまったので、続きはまだ。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加