「涼炉」(りょうろ)は煎茶道特有の道具で、お湯をわかすための焜炉(こんろ)です。「冷炉」「茶炉」「風炉」とも呼び、ボーフラと涼炉台(涼炉を置く台)とセットで、使用されます。
火を起こすための道具「涼炉」
元々中国では、涼炉は持ち運びできるコンロとして、野外で茶を淹れるために使われていました。日本に伝来した後、野外だけでなく室内でも利用され、煎茶道でお手前にかかせない道具となっています。
涼炉
涼炉は灰をも入れず鉄三脚をも用ぬ炉なり。俗これをコンロといふ。唐製をよしとす。
形雅にして火つよく熾るを用ゆべし。当時京都の陶工清水六兵衛、五条建仁寺町に住す、唐製を模するも妙を得たり。此六兵衛造る所の小涼炉揚名合利の印あるは、唐涼炉のうつしなり。
形ちいさけれども火よく熾、他所へ持行もよし。二重涼炉も華物をうつして作れり。
持扱うに手熱からず。火をあふぐに灰ちらずしてよし。其外さまざまあり。
作は此人に限らず湯の沸ことの速なるを用ゆべし。煎茶略説(澤田楽水居 著、1798年)
江戸時代の涼炉の記録
「煎茶略説」では、江戸時代、京都の陶工・清水六兵衛が、「揚名合利」の印をいれた、中国の涼炉の写しを作っていたことが記されています。
涼炉の素材
素材は白泥(はくでい)の素焼きが多く、上部に炭を入れて火をおこし、ボーフラの湯を沸かします。ボーフラを載せる穴の部分は「火袋」と言います。
素焼きのほか、本体が陶器で、火があたる部分だけ素焼きにし、取り外せるようになっているものや、炭を使わない電気式のものもあります。
お稽古や火気の利用が禁止されている茶室用に、炭を使わない電気式のものもあります。
涼炉の形状
炉身の形
涼炉の胴体の形により、色々な種類があります。大きさは色々ですが、おおよそ高さは24cm前後、胴の太さは12cmくらいのものが標準と言われています。持ち運びやすいよう、背の低い涼炉もあります。
四角(方式) | 胴体が四角形 |
太鼓胴形 | 中央が膨らんでいる形 |
鬼の腕(かいな)形 | 上下がせり出し、中央がえぐれている形 |
円筒形(筒式) | 胴体が円柱の形 |
上部の形
ボーフラを上に載せるために、涼炉の上部には、爪が3つ付いています。上部の爪の形の違いにより、以下の2種類の炉があります。
三峰炉 | 爪の間がえぐれて、低くなっている形 |
一文字炉 | 爪の間が平らで、一直線になっている形 |
風門の形
「風門」(ふうもん)は、風抜きのために涼炉に開けられている穴です。炉扇であおぎ、風門から風を送って炭火を起こします。
隠元禅師が持参した煎茶道具の中にも、涼炉がありました。禅師の涼炉は、楕円形の風紋の下に、透かし彫りで「卍卍卍」と、卍の字が3つ施されているものでした。
- 長方形
- 亜字形
- 木瓜形
- 開唇形
- 円窓形
- 開扇形
- 楕円形
- 舌出し形
涼炉台
涼炉は、下に涼炉台(炉坐とも)を敷いて使用します。 涼炉とセットで売られている同素材のものや、瓦など別のものを見立てて利用したりします。