延暦寺元里坊 旧竹林院@比叡山坂本

旧竹林院@比叡山坂本

比叡山延暦寺と日吉大社の門前町、坂本。日吉大社の程近くにある「元里坊・旧竹林院」に。

里坊(さとぼう)とは、延暦寺の僧侶の隠居所のこと。坂本の町は、比叡山延暦寺の門前町として栄えた地域で、旧竹林院も里坊のひとつ。約3,300㎡の池泉回遊式庭園を擁し、紅葉と苔の美しい風景が広がっていた。

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紅葉の参道

日吉大社の参道

坂本駅を降りて、日吉大社の参道「日吉馬場」(ひよしのばんば)へ。

紅葉がちょうど見頃で、参道を彩っていた。あいにく曇りだったが、たまに差す日の光で葉が透けて美しい。

日吉馬場の紅葉

穴太衆積の石垣

 比叡山坂本の参道

紅葉のトンネルを行く。苔むして古色を帯びた石、石、石。

自然石をそのままの姿で積み上げた「穴太衆積み」(あのうしゅうつみ)と呼ばれる石垣が、城壁のようにそびえる。「石の声を聞き、石の行きたい所に石を置け」という教えを持つ、石工集団「穴太衆」の築いた堅牢な石積。

旧竹林院 入り口

旧竹林院_入り口

参道を右手に曲がると、旧竹林院が姿を見せた。こちらも、もちろん穴太衆積で石垣の背がだいぶ高い。

旧竹林院 母屋

旧竹林院の母屋

旧竹林院は廃仏毀釈により荒廃し、一時個人所有となった後、大津市所有となり、現在の姿に。

母屋は、明治時代に作られたもの。耐震工事が完了し、2014年9月から二階も拝観できるように。改築の影響で、サッシなどが木造ではなく新しいものになっており、少し残念。

手前に植えられているのは枝垂れ桜で、春も綺麗なのだろう。

書院の床紅葉

旧竹林院の床紅葉

磨き上げられた机に、紅葉が写りこむ。鏡面の如し。

旧竹林院_二階

紅葉のオンシーズン、どこも混みあう時期だが、京都と違って人もあまり多くなく、ゆったりと拝見できる。1階の座敷では、庭を眺めながらお抹茶も頂けたようだ。

回遊式庭園

旧竹林院の庭園入り口

母屋を離れて、回遊式庭園に。

建物内から拝見するだけではなく、庭園内を散策できるのはうれしい。

旧竹林院の回遊式庭園

起伏に富み、非常に広い庭園。

比叡山の厳しい修行の場を「山坊」と言うのに対し、修行を終えた老僧が余生を過ごす場「里坊」。隠居と聞くと少し物悲しい印象があるが、非常に贅沢な空間が広がっていた。 

八王子山と奥宮

旧竹林院_八王子山の借景

中央奥に、日吉大社の神体山・八王子山(牛尾山)と日吉大社の奥宮が見える。日吉大社の信仰の原点、巨大な磐座「金大巌」(こがねのおおいわ)がある。

左手には四阿(あずまや)。比叡山を水源とし、日吉大社の境内を流れる大宮川をひきこみ、清流が流れる。

旧竹林院の回遊式庭園

母屋から見た印象よりも、奥深い庭。苔むした岩石に小川に木々の根にと、野趣あふれる。空気もひんやりとしている。

散り紅葉

苔と紅葉

11月だが、川面が凍っており、紅葉が薄氷の上に浮いていた。苔の緑と、紅葉の赤が色鮮やか。

旧竹林院のつくばい

苔むした手水鉢にも、紅葉がはらり。

旧竹林院には、2棟の茶室がある。小間の茅葺屋根の茶室「天の川席」と、広間の茶室「蓬莱」。

天の川席は貴人席が2つに炉が中央にある造りで、全国でも武者小路千家の東京道場(東京都文京区・旧久米邸)以外、例がない珍しい茶室とか。つまりは、日本に2つだけ、ということ。

敷き紅葉

散り紅葉

幾層にも積み重なり、絨毯のような散りばめられた紅葉。

比叡山の借景、庭園を流れる渓流、書院の開放感といい、京都の無鄰庵に似た雰囲気を感じる。

旧竹林院の杉苔

紅葉をかきわけて、天へと伸びるふさふさとした杉苔。庭園の苔が瑞々しく、とても綺麗だった。

旧竹林院のある比叡山坂本は、京都駅からJR湖西線で20分ほど。駅から20分ほど歩くが、バスで行くこともできる(ゆらゆらと揺られること約5分、日吉大社前バス停で下車してすぐ)。滋賀は思いのほか近い。

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