宝瓶(ほうひん) は、急須と同じく、茶を淹れる器です。注ぎ口が三角形で、持ち手がないことが特徴です(稀に横手に持ち手のついているものもあります)。
主に、玉露を淹れるときに使用します。「泡瓶」「方瓶」などと書くこともあります。
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宝瓶
玉露や高級煎茶などを、低温で淹れる茶器

低い温度で淹れる玉露は、茶器が熱くならないため、持ち手を必要としない宝瓶が生まれました。比較的、歴史の新しい茶器です。
いつ頃作られるようになったのか、その歴史はよく分かりませんでしたが、明治時代には既にあったようです。入間市博物館に、19世紀頃に作られた、常滑焼や萬古焼の泡瓶が収蔵されています。

胴体は朝顔型で、茶葉の広がりが早く、しっかり開くため、旨味がより引き出されるという特徴があります。持ち手がないため、高温で淹れるお茶には向きません。陶器のものも磁器のものも作られています。
宝瓶の由来
宝瓶は、中国茶で使われる「蓋碗」(がいわん。蓋つきの茶碗)が元となった、という説もあります(※蓋碗は、すすり茶の手前で、すすり茶碗の代わりに用いられます)。

絞り出し

福岡県の八女の星野焼・京都府宇治の朝日焼・愛知県の常滑焼には、宝瓶によく似た「絞り出し」という茶器があります。片手で使える小ぶりな大きさのものが多く、宝瓶より底が浅く、皿のような形をしています。
最後の1滴まで、絞り出す
茶こしの代わりに、注ぎ口に筋目(溝)が掘ってあり、隙間から茶をこすようにして注ぎます。こちらも宝瓶同様、少量の玉露に適しており、「最後の一滴まで、絞り出して味わえる」ことから、その名が付いたと言われています。
ちなみに、密教における宝瓶は「ほうびょう」と読み、入門の儀礼である灌頂(※頭の頂より水を注ぐ)で使う水瓶のことだそうです。