赤坂の日枝神社で毎年6月に行われる、「山王祭」。
京都の祇園祭、大阪の天神祭と共に、日本三大祭の1つと言われています。ひと月の間、様々な神事や催しが行われる中、6/16は煎茶道の献茶式と和菓子のまつり「山王嘉祥祭」が執り行われました。
煎茶礼道 日泉流 献茶式
日泉流(ひよしりゅう)という煎茶道の流派のお家元が、拝殿にて献茶を行っていました。
「1990年11月に日枝神社の宮司より流名を受け、創流」と比較的新しい流派のようです。日枝神社の巫女の方に煎茶の稽古をつけている、とのことでした。
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宮司の方の祝詞の後、日泉流お家元による献茶の儀式が始まります。
向かって左側に神職の方々、右側はお着物の女性とスーツの男性、社中の方々でしょう。
関係者でないものの、「よろしければ、拝殿でどうぞ」と神職の方に促されるまま、下拝殿にて参列させて頂いてきました。
お道具組は、桐の棚板に竹の棚に、錫の茶心壺と、茶台に乗せられた蓋付茶碗。青竹の結界、仙盞瓶型の白い水注と茶銚、小ぶりな建水。白を基調した、すっきりしたもの。
淹れられた茶は、巫女の方が神前に運んで奉納し、無事に献茶が終了しました。
袱紗の扱いや清め方は、流派によってお手前の違いが出やすいのか、新鮮な印象を受けてきました。以下、献茶式の覚書です。
献炭
まずは、炭の準備。炭取り・盆巾入れを手前盆の左手に。湯気が立ち昇るボーフラを瓶床の上に降ろす。かなり湯気が上がっており、気になっていたので、ほっとした心持ちになる。
火箸で細長い炭を取り、涼炉の中に4つ入れて組む。羽箒 (はぼうき)で、涼炉の上部と風門を清め、ボーフラに水を足し、涼炉に戻す。
献茶
茶の準備を始める前に、懐から「覆面」(ふくめん。白いマスク)を取り出して、口を覆う。
水注の水で茶碗を洗い、茶巾で清め、ボーフラの湯で茶碗を温める。
白い袱紗で、茶心壺を清める。仙媒は、袱紗の上に置くようにし、まず外側を清める。その後、袱紗を小さく四角く畳み、内側を手前から外側に向かって清める。
仙媒を左手に持ったまま、右手で手前盆の茶心壺の蓋を開け、茶を測り、「茶葉→湯」の順に茶銚に注ぐ。清めた茶台に茶碗を乗せて蓋をし、茶を奉納。右手に建水を持ち、手前座を辞す。
煎茶礼道 日泉流 野煎拝服席
献茶の後は、下拝殿の中に呈茶席が。日枝神社の巫女の方が煎茶のお手前を披露し、無料で冷茶が振舞われました。
作法や服装などを気にせず、気軽に入れるカジュアルなお席で、出入りは自由。お手前中にお茶が水屋から次々と振舞われ、一煎飲んですっと席を外す方もちらほらと。
日枝神社 巫女のお手前
緋袴の巫女の方が建水を右手に持ち、緋毛氈の敷かれた手前座に。
略式なのか袱紗は用いず、茶碗は3つで柄違い。小振りの瓢杓と仙媒、背の低以下涼炉と、野点の風情。
青竹の結界の向こう、錫の宝瓶台と宝瓶。
染付の煎茶碗は清水焼で、平安清昌作。水屋から出されるお茶碗も揃いのもの。冷たく甘いお茶(振舞われたのは水出しの新茶)を頂き、すっとした気持ちに。
山王嘉祥祭
山王嘉祥祭は、伝統の和菓子を「菓子司」が神前に献じ、万民の「疫難退散」と「健康招福」を祈願する行事です。
こちらも誰でも参列できることもあり、あっという間に下拝殿に設けられた席は埋まり、立ち見の方も。海外の方も、知ってのことか偶然か、たくさん見えられていたように思います。
大きな太鼓の音に始まり、浅沓(あさぐつ)をはいた神職の方々、揃いの法被を着た東京和菓子協会の方々が続々と。
祝詞の後、烏帽子をかぶった「菓子司」が神前に。緊張がこちらにも移りそうな中、素早い手付きであっという間に練切が作られ、神前に菓子が奉納されました。
4人の巫女の神楽の舞(「悠久の舞」と言うそう)・玉串奉奠と、祭典は滞りなく終了し、参列者には「厄除招福」のお札と水羊羹が授与されました。
献上菓子「牡丹」「双葉葵」
献じられた和菓子は、神事中日本語作られた「牡丹」の練切と、日枝神社の社紋の「双葉葵」の練切。
どちらもこぶし大と、非常に大きなもの。献上菓子は、祭典後に拝殿から場所を移し、参列者も拝見できるよう展示されていました。前列に座っていたため、先の案内となりすぐ拝見できましたが、その後は献上菓子を一目見ようと大勢の参列者が押し寄せ、大変な混雑となっていました。
神事の為、写真撮影はもちろん禁止ですが(※許可を得た方のみ撮影可)、過去の山王嘉祥祭の様子が、日枝神社より公開されていました。献上菓子は毎年、違うものが作られているようです。
茶菓子接待席
齋庭では終日、お茶と菓子の無料のお振る舞いが行われていました。
こちらも社紋の「双葉葵」をかたどった落雁、茶碗にも双葉葵。お茶は狭山茶の新茶で、日枝神社の境内には狭山茶の茶園があります。こちらの新茶を神前に供え、山王祭の期間中、振る舞っているそうです。
おいしいお茶を幾煎も頂き、お茶尽くしの1日となりました。