お茶の実から作られる「茶油」

台湾が好きな人であれば、一度は耳にしたことがある茶油。

その名の通り、お茶の実から採取したシード・オイルです。台湾では「苦茶油」、中国では「山茶油」などと読んでおり、スーパーに普通に置いてあるくらいメジャーな品物。日本ではあまり馴染みのないものですが、最近、徐々に注目されるようになり、国産の茶油も見かけるようになりました。

目次

茶油の歴史

茶の実

中国では2000年以上前から「茶油」を利用しており、楊貴妃が愛用していたことでも知られています。「本草綱目」には、茶油について以下のような記載があります。

苦茶油性偏涼,涼血止血,清熱解毒,主治肝血虧損,驅蟲,益腸胃,明目。

茶籽,苦含香毒,主治湍急咳嗽,去疾垢。

本草綱目(李時珍)

冷却作用や止血作用、便秘解消、熱冷まし、解毒など、さまざまな効能がうたわれています。特徴として、オリーブオイルと同様、オレイン酸が豊富(80%以上)。また、飽和脂肪酸の含有量が少ないため、健康油として注目を浴びています。

台湾の茶油

【茶油料理】台湾の苦茶油麵線。ソーメンを茶油で炒めたシンプルな料理。

ひとくちに茶油といっても、台湾では2種類の茶油があります。

茶籽油(茶実油) Camellia Sinensis Seed Oil

一つは、茶葉も油も採れる「ツバキ科ツバキ属」のチャの種子から作る「茶籽油」。「茶籽」とは茶の実のこと。烏龍茶などを作る茶木の実をとり、抽出したオイルです。

台湾の茶油メーカー

苦茶油(山茶花油)Camellia Oleifera Seed Oil

もう1つは、「ツバキ科ツバキ属」の「油茶」(ユチャ)とタイワンサザンカの種子で作る「苦茶油」。油を作るための木から、油茶の木の実は「苦茶籽」。

「油茶」は茶の字が入っていますが、茶の樹ではありません。中国原産の常緑低木で、学名は「カメリア・オレイフェラ」(Camellia oleifera)。「oleifera」は「油を有する」という意味で、アブラツバキとも呼ばれています。油茶の花と実については、こちらのサイトで写真を見ることができます。

  • 原種椿(いのくち椿館)
    • ユーシエネンシス  (攸県油茶)
    • ベトナメンシス   (越南油茶)
    • チェキアンオレオーサ(浙江紅花油茶)
    • トウツバキ     (雲南紅花油茶)

日本の茶油

一部は「椿油」として流通

左が椿の実、右が茶の実。茶の実は椿に比べて一回り小さい。

とても紛らわしいのですが、茶・油茶はいずれもツバキ科ということもあり、日本国内では「椿油」としても流通しています(成分や原材料に「カメリア種子油」(camellia seed oil)と明記)。

成分や原材料がカタカナで「ツバキ油」の場合は、原材料は日本原産の「ヤブツバキ」(Camellia Japonica)です。

なぜこんな紛らわしいのかというと、日本薬局や医薬部外品原料規格で「ツバキ油とは、ツバキ科ヤブツバキの種皮を除いた種子から得た脂肪油」と定められているからです。一方、漢字の「椿油」は規制がないので、茶や油茶などの「カメリア種子油」も含みます。

油の種類原材料
茶油・茶実油(カメリア種子油)チャ     (ツバキ科ツバキ属チャノキ節)
苦茶油・山茶花油(ユチャ種子油)アブラツバキ (ツバキ科ツバキ属サザンカ節)
ツバキ油(ツバキ種子油)ヤブツバキ  (ツバキ科ツバキ属ツバキ節)

国内生産の「茶油」

茶の花。椿よりこぶりな白い花が咲く。ミツバチがこぞって蜜を集めに来る。

調べてみた所、日本にも茶油を作っている所がいくつかありました。

通常、茶園では花を咲かせないように茶木を管理するため、実がなることはありませんが、耕作放置地の利活用などの点において茶油の製造販売が増えているようです。

食用油

スキンケア用オイル

お茶の実を活用。自家製茶油の作り方

尚、茶の木を育てていれば、自分で茶油を作ることができます。基本的な作り方は椿油と同じで、茶の実は小さいので油のとれ高は少ないです。

用意するもの

  • 茶の実 ※大量に必要
  • ペンチ or トンカチ
  • ミキサー
  • ガーゼ(さらしや、薄手のキッチンペーパーなどでもよさそう)
  • 茶こし
  • 蒸し器

茶油の作り方

茶の実を採集して向き、種を天日にあてて乾燥させている所。この後、硬い殻を割り、中身を取り出す。
  1. 大量の茶の実を集める
  2. 10日間、天日で乾燥させる
  3. ペンチやトンカチで殻を割り、中身を取り出す
  4. ミキサーで実を細かく砕く
  5. 油が出やすくなるように実を蒸す(数分間)
  6. ガーゼに粉砕した実を包み、雑巾絞りの要領で油を搾り出す ※一番大変
  7. 不純物を取り除くため、茶こしで油を濾過する

実際に作ってみた所、 まず殻を割って中身を取り出すだけでも大変で、かなり時間がかかりました。1つ1つ割っていく地道な作業です。最初に実の水分を飛ばすために天日に干すのですが(虫がいることがあるので外が○)、代わりにフライパンやホットプレートで炒ってもよいようです(5~10分くらい・弱火)。粉砕した実を蒸していると、なんとも香ばしい香りがたちこめて、この時点で間違いなく美味しいことを確信。

殻を割ってむいた茶の種。薄皮はついていても大丈夫。

完成した油はきれいな黄金色でさらりとしており、ナッツのような香りでした。実から本当に少量しか取れず、茶油が高級な理由がよくわかりました。

手で実から油を絞り出すのはかなりの力仕事でとても大変なので、もし定期的に作るという方は、家庭用の圧搾機などがあると便利かもしれません。電動式は高いですが、手動式ですと1~2万で購入できるようです。


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