茶旗・茶帘

茶旗

「茶旗」(ちゃばた)は、茶会を開いている目印として、煎茶席のそばに掲げられるものです。「茶帘」(ちゃれん)・「軒旗」(のきはた)とも呼びます。

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茶旗の由来

江戸時代、売茶翁が野外で茶席を設けていた時、松の枝等に茶旗をかけ、道行く人に「お茶を淹れていますよ」と知らせる目印としていました。

そこから、煎茶道の茶会を開催している時に、茶旗を掲げるようになりました(※流派によって使わない所もあります)。茶の湯であれば、「在釜」(ざいふ)の意味合いを持つ目印です。

売茶翁の茶旗

木村蒹葭堂の著「売茶翁茶具図」に、売茶翁の茶旗の図が残されています。

清風の茶旗(売茶翁茶器図)
清風の茶旗(売茶翁茶器図

茶旗には、唐の詩人・盧仝の「七碗茶詩」にちなんで「清風・通仙亭」と書かれ、左右には「負郭占楼地 緑林致茗筵」の詩文が添えられています。

左側の説明書きには、「高翁常用之衣絹也、清風之文字 大典禅師書、左右之詩文 桂州禅師書、波花三口氏蔵」と書かれており、清風の文字は大典禅師・詩文は桂州禅師の筆であることが分かります。

茶旗の言葉

茶旗

流派名の他、「清風」「通仙」「神仙」「浄遊」「松風」など、売茶翁や茶にゆかりのある言葉・禅語・雅味のある言葉が書いてあります。また、流派名が掲げられる時もあります。

茶旗のサイズは、おおよそ「縦40cm×横30cm」ほどのものが多いようです。

茶旗

京都の料亭に見る旗

瓢亭の茶旗

京都の老舗料亭「瓢亭」も、軒先に吊り下げ旗を掲げています。これは、かつてのお茶屋の名残だそうです。茶会で使われる茶旗と、同じデザインの旗が使われています。

瓢亭は、約400年程前、南禅寺境内で門前茶屋として始まりました。

江戸時代の名所案内「花洛名勝図絵」(1864年)で煮抜き卵の名店として紹介されており、当時から丹後屋と共に名を馳せていたことが分かります。

南禅寺総門外 松林茶店
丹後屋の湯豆腐は古よりの名物にして、旅人かならず是を賞味し、瓢亭の煮抜玉子は近世の奇製なりとて、ここの酒客あまねくこれを食悦す。

夫豆腐は夏の茄子、冬の大根にも勝りて、四時ともに風味を違へず。形方にして種なく福分を調へ、所謂精物の随一たり。又煮抜き卵は春の桜鯛、秋の紅葉鮒にも超へ、河海のしけを知らず。形円くして骨なく腎精を健にす。頗る生物の最上といふべし。実や方円陰陽の味ひ、いづれも無双の料理の塩梅、老若男女のけじめなく、皆歓びの色かへぬ松のはやしに千代かけて、古今の名物両店の繁昌はこれも花洛の一奇といふべし。

花洛名勝図絵(1864年)

南禅寺門前の瓢亭「花洛名勝図絵」
右下に瓢亭が見える。「花洛名勝図絵」(出典:国際日本文化研究センター
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