「茶托」(ちゃたく)は、茶碗の下に敷く受け皿のことです。
煎茶道の流派によっては、「托子」(たくす)「飛閣」「秘閣」(ひかく)「納敬」(のうけい)「盞座」(せんざ)などとも呼びます。
茶托の歴史
今では茶托という名称が一般的ですが、江戸時代には「茶台」「托子」と呼ばれていたようです。
托子(タクシ・チャダイ)
(録)小茶台 (譜)小納敬(のうけい) (園)小漆彫秘閣などいへり。今俗間小用ふる高茶台は全く小漆彫秘閣と模せることの小〇てう小閣せるに今の煎茶家 小用ふる船来新渡の形して〇て後世のをのと〇べし。
銅茶錫磁〇ぐのかこちもあれど 高茶台〇にの古色と存ぜることの近今の船来小〇を〇くなり
※〇:解読できなかった文字
煎茶訣(深田精一、1849年)
江戸時代中期の百科事典「和漢三才図会」においても、「托子」に「ちゃだい」というフリガナがつき、俗に茶台と書くと解説されています。また、「煎茶概説」では、「茶托子」(ちゃわんのぼん)という名で「茶台の代理に用ゆる小さき銘々盆なり」と紹介されています。
元々は茶碗には茶台が使われ、托子という当て字が用いられていたようです。
茶台
茶台は、円形の台に脚がついた物・鐔のある物・平たい物など、形状は様々です。
托子
台湾の国立故宮博物院には、「和漢三才図会」に掲載されている托子によく似た托(盞托)が収蔵されています。現在では、茶台は主に仏具として使われますが、茶道では天目台・煎茶道では献茶の際に使われます。
盃托
江戸時代中期、杯(盃)と杯台(盃托)が輸入されるようになり、杯が茶碗に転用される際、杯台が茶托として使われるようになったそうです。 中国の杯台を見ると、現在の煎茶道で使われる茶托とほぼ同じ形状です。
茶托がいつ頃から使われ、その名で呼ばれるようになったのか、詳しい変遷は分からなかったのですが、江戸時代の煎茶の流行に伴い、煎茶道具の一つとして一般化したと言われています。
茶托の扱い
茶を飲み終わった後の茶碗の扱いについて、茶碗を茶托に伏せておく流派と、伏せない流派とに分かれます。
- 伏せる理由
- 「ご馳走様でした」「もう結構です」という意思表示のため
- 茶碗の中に、塵や砂が入らないようにするため(野点からの名残)
- 伏せない理由
- 「茶托に茶をこぼすことは厳禁」とされるため
茶托の素材
茶托の材質は、様々なものがありますが、煎茶道では錫製の茶托が最上と言われています。お茶会でも、一番目にする機会の多い素材の茶托です。
錫製茶托
錫製の茶托は程よい重さがあり、手によく馴染むため、愛用されてきました。
中国から輸入される茶托には錫製が多く、錫は年代を経るごとに古色が加わり、味わいが増します。古錫茶托などと呼ばれます。打ち目や透かし彫りなど、凝った細工がほどこされた物もあります。
木製茶托
木製の素材には、松・竹・欅(ケヤキ)・花梨・紫檀・黒檀などが用いられ、白地や漆塗のものなどがあります。
茶托の形状
円形や小判形などのシンプルな形や、花をかたどった梅花形・芙蓉形など、様々な形があります。茶碗の高台に合わせて中央がくぼんでおり、茶碗が茶托からずれないので安定感があります。
- 円形(園形)
- 小判形
- 菱形
- 木瓜形、剣木瓜形
- 分銅形
- 托舟形
- 花形(梅花形、芙蓉形、菊花形など)
- 葉形(荷葉形、蓮葉形、一葉形など)
- 魚形