茶具褥・茶具敷

煎茶道で使われる布物の1つに、「茶具褥」(ちゃぐしょく・さぐじょく)がある。これは煎茶道具を載せる敷物のこと。流派によって様々な呼び方があり、「茶具敷」(さぐしき)、単に「褥」(じょく)とも呼ぶ。

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茶具褥の役割

茶具褥は、テーブルクロスのように畳や机の上に敷いて、煎茶道具を載せるためのもの。道具や畳を汚れや傷から守る役割がある。茶具褥は、茶のしずくや涼炉の火の粉でシミや穴ができることも多く、消耗しやすい道具の1つ。

茶具褥の代わりに敷板などや大きな盆を使うこともある。また、手前や道具組によって何も敷かない場合もある。サイズに厳密な決まりはないが、一般的なものは、畳よりもやや小さい「75~80cm × 60cm前後」のものが多い。

茶具褥のルーツ──「坐具」(ざぐ)

茶具褥の原型は、黄檗宗をはじめとする禅宗で使われていた「坐具」(ざぐ)と言われている。

坐具とは、五体投地の礼拝や読経の際に使う敷物で、「尼師壇」(にしだん)とも呼ぶ(梵語 niṣīdana に由来)。使用しないときは折り畳み、肩にかけて持ち歩くのが特徴。

仏教で「六物(ろくもつ)」と呼ばれる、出家者に必要とされる6つの道具のひとつに、この坐具も含まれている。

  • 三衣         :僧伽梨(そうぎゃり)・鬱多羅僧(うったらそう)・安陀会(あんだえ)の三種類の袈裟
  • 鉢          :托鉢の際、お布施を受ける器
  • 漉水囊(ろくすいのう):水から虫を除くためのこし器
  • 坐具(座具)     :敷物。尼師壇(にしだん)とも。こちらは梵語のniṣīdanaに由来する。

尚、坐具の作り方については、書籍「袈裟の研究」(大法輪閣・ 監:澤木興道、編:久馬慧忠)に記載がある。

様々な茶具褥

無地の茶具褥

よく売られている紺地に金色の縁飾りの茶具褥(70✕63cm)

最もよく見かけるのは、紺地に金色の縁取りがついた木綿地の茶具褥。黒やグレーなどの色合いのものもある。

名物柄・更紗柄の茶具褥

牡丹唐草文様の緞子の茶具褥(70✕63cm 正絹)

煎茶道が盛んだった江戸時代には、鮮やかな色彩と異国情緒あふれる文様が人気を集め、古渡更紗や中国の古布など、海外からの渡来品が好まれた。素材も多彩で、綿・麻・絹のほか、網代編みのものも見られる。

各地の博物館に所蔵されている茶具褥

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