茶を祖先に持つ民族「徳昴族」|アジアの茶文化

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ミャンマーの食べるお茶ラペソー」に続いて、アジアの茶文化シリーズの3回目。今回は、茶を祖先に持つアジアの山岳民族「徳昴族」についてのお話。

目次

茶を祖先に持つ徳昴族

ミャンマーのパラウン族
漆がつなぐアジアの山々」展の展示パネルより

ミャンマーのシャン州および、中国雲南省に住む山岳民族「徳昴族」(ドアン族・トーアン族とも ※)。中国では「古老茶農」と呼ばれ、古くから茶の栽培で知られる少数民族。

※ミャンマーでは、ビルマ語名の「パラウン族」と呼ばれる。中国ではパラウン族の音訳で崩龍族と呼ばれていたが、1985年に自称に基づき徳昂族に改称している。そのため、こちらの徳昂族の名称を用いる。

茶を祖先とする創生神話

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伝説によれば、徳昂族は茶の神様の末裔で、始祖は茶葉が人となった人間だと言う。

天界には1株の茶の木があった。茶の木は大地を天界と同じように美しくしたいと思い、知恵の神が試練を与えて試すことになった。

102枚あった茶の木の葉の半分は人間の若者に、半分は娘に変わった。(※中略)

50人の娘たちは腰につけていた腰箍を外して天界に帰ったが、一番下の娘だけは腰箍を外さず、一番下の若者と一緒に大地にとどまった。これが、徳昴族(パラウン族)の始祖となった。

「漆がつなぐアジアの山々」展の展示パネル「少数民族の輪飾り」

パラウン族の起源
漆がつなぐアジアの山々」展の展示パネル「少数民族の輪飾り」より

茶を用いる儀礼

徳昂族は、婚姻儀礼でも茶を用いる。男性は、バナナの葉で包んだ茶葉を竹籠に入れ、塩の小包と共に女性に贈る。また、人生の節目節目、日々の生活に茶が用いられている。

雲南省に居住する少数民族徳昴族は、自らの祖先を「茶」であるとする創世神話を持っている。彼らは、子供が生まれるとお茶の産湯に浸からせ、人が亡くなると棺に茶の葉をひきつめる。

文字を持たない彼らは様々なメッセージにもお茶を使っている。

お茶の種類(製茶法や品種は未確認)や包み方(竹の籠にいれたり、竹の皮で包んだり)によって、それが助けを求めている合図であったり、祝い事がある知らせであったりするという。

茶文化交流の向こうにあるもの(上原美奈子、2013年)

茶の木の神様の末裔の人生は、産まれてからこの世を去るまで、常に茶と共にある。

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