黄檗売茶流 初煎会 2025@東京

黄檗売茶流 初煎2025

睦月の某日、、令和七年の「黄檗売茶流 初煎会」が、東京・浅草の待乳山聖天(まつちやましょうてん)にて執り行われた。

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令和七年 黄檗売茶流 初煎会

今年茶会の舞台となったのは、「大根まつり」で有名な寺社「待乳山聖天」。

東京・浅草にある天台宗の寺院で、正式名称は 「本龍院」(ほんりゅういん)と言う。奈良時代に慈覚大師(円仁)によって開山されたと伝わり、千年以上の歴史を持つ古刹で、「 歓喜天」(かんぎてん)が祀られている。

待乳山聖天と大根まつり

毎年一月には「大根まつり」が催され、境内では前日にお供えされた大根が「お下がり大根」として参拝客に無料配布されていた。一つ、ありがたく頂戴した。

境内には、至るところに大根と巾着袋の意匠が施されている。大根は「無病息災・夫婦和合」、巾着袋は「商売繁盛」を表している。この巾着袋は唐菓子の「歓喜団」(かんきだん)で、日本最古の和菓子と言われている。別名「聖天さん」。京都の和菓子屋「亀屋清永」さんで、「清浄歓喜団」という名前で購入することができる。

伊藤若冲の巳年の木版画

昨年に続き、今年も伊藤若冲の貴重な木版画が披露された。黒目がちのつぶらな瞳で、かわいらしい顔をしている蛇。この木版画は、画も彫りも若冲自身の手によると伝えられてる。京都の「閑臥庵」が所蔵する版木から刷られた、大変貴重な一枚。版木は刷るたびに摩耗してしまうため、そう滅多に刷られないものかと思う。

席飾りと設え

染付でそろえられた、茶心壺涼炉水注の三ツ飾り。 茶・火・水の調和。昭阿弥作で、淡く紅がさしてあり、染付の青に美しく映えている。

結界は卍崩しの意匠これは江戸時代初期に黄檗を通じてもたらされたそうで、黄檗宗の大本山・萬福寺はじめ黄檗寺院の勾欄によく見られる。

黄檗宗 崇福寺(長崎)の卍崩しの勾欄

稽古の語源

「稽古照今」(けいこしょうこん)——古きを稽(かんが)え、今を照らす。

「茶会はハレ、日々の稽古はケ」と思われがちだが、実際にはそこに差はない。流祖が完成させたものを変えずに守り、そのまま伝えるというものではなく、未知の世界に終わりはない。常に学び続け、未完成から完成へ向かう道を歩む。その過程に意味がある。というお話が心に残った。

AIのコモディティ化など、世の中の変化のスピードが加速度的に増している現代。技術革新を知り、最先端の情報を追いかける楽しさもあるが、同時に古きを学ぶことでバランスが整うようにも思う。

変えられるものを変える勇気を、変えられないものを受け入れる冷静さを、そしてそれらを識別する知恵を、というニーバーの平安の祈りをふと思い出しては帰路についた。

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