「伊達家御用菓子司」として、仙台藩の城下町で1675年(延宝参年)創業した老舗和菓子店、「九重本舗 玉澤」。今年2025年で創業350周年を迎える老舗和菓子店だ。昨年2025年10月に本店が移転し、リニューアルオープンした。
2024/10/11(金)に本店を移転

サンモール一番町商店街に本店がオープン。新店統合のため、本社工場直営店・藤崎店・エスパル店は閉店したので、店舗は本店に集約された形。ブランドロゴもリニューアルされ、一新。ドラスティックな変化。
仙台駅からは歩いて15分程度。最寄りの地下鉄東西線「青葉通り一番町駅」からは徒歩分。開店時間ちょどくらいに訪れた所、既に数十人の行列ができていた。午後からはカフェスペースもオープンするそうだ。
九重本舗玉澤 本店
- 住所 :〒980-0811 宮城県仙台市青葉区一番町2-3-33 第八藤榮サンモール一番町 1階
- TEL :022-399-8880
- 営業時間 :10:00~18:00
- 公式サイト :https://www.tamazawa.jp/
- ネットショップ:https://tamazawa.thebase.in/
九重本舗 玉澤の歴史

ショーケース沿いに行列に並んでいる間、商品やお店の歴史の展示スペースなどがあり、を感じられるようになっている。


江戸時代(1675年)、「伊達家御用菓子司」として開業

延宝3年(1675年)、初代・玉澤伝蔵が4代藩主・伊達綱村公により近江国から招かれ、「伊達家御用御菓子司」として開業したのが、九重本舗 玉澤の始まり。
現在でも、玉澤社屋には江戸時代の作といわれる初代の木像が安置され、季節ごとの着物を着替え、朝晩欠かさずにお茶と御菓子を供え、伝蔵の築いた菓子作りを守り続けております。
玉澤の菓子作りの心を表す逸話を通じ、代々の当主に培われた製菓技術と創造より生み出された御菓子は、初代・伝蔵から長い時を経てお客様より育まれましたご愛顧の賜物でございます。※出典:九重本舗玉澤公式サイト
こちらが初代・玉澤伝蔵の木像(仙台藩御用細工師、中川兵吉作)。茶と菓子が供えられていた。

屋号の由来となった飲む和菓子「九重」

こちらは、屋号の由来となった代表銘菓の「九重」(ここのえ)。和菓子ではなく、お湯を注いで飲む香煎のような飲み物。
九重の名は、明治天皇が仙台に行幸された折に献上した所、お供の東久世 通禧(ひがしくぜ みちとみ)、が古歌にちなみ、命名したとか。 女流歌人の伊勢大輔(いせのたいふ)が詠んだ有名な歌で、百人一首にも採用されている。九重とは、宮中を意味する古語。
いにしへの 奈良の都の 八重桜
けふ九重に 匂ひぬるかな
子どもの頃は当たり前に飲んでいたが、地元にしかないものだとは、昔上京した折に初めて知った。柚子(黄)・ぶどう(紫)・ひき茶(緑)の3種類あり、溶かすと鮮やかな色が広がり、上品なほのかな甘味。
明治時代(1891年)、フランス風ビスケットを発売

歴史パネルを拝見していると、明治時代いち早く洋菓子を販売している。ハイカラなお店だったのだろう。
明治24年(1891年)、
八代目伝蔵がまだ東京でも珍しかった
フランス風ビスケットを
玉澤の名物菓子として発売
※店舗のパネルより
そういえば、九重本舗玉澤さんには「初代伝蔵せんべい」という洋菓子もある。ビスケットにクリームがはさまれている洋風せんべい。
本店のみで購入できる、冬季限定の銘菓「霜ばしら」

10月~翌4月の冬季限定で販売される「霜ばしら」。
2021年に箱と缶がリニューアルされ、菓子の美しさや儚さがより伝わるミニマムなデザインに。前の青い缶もなつかしいけれど。紙袋や包装紙も、霜ばしらの柄にデザインがリニューアルされている。

霜ばしらは毎日数量限定で販売され、開店前から霜ばしら目当てのお客さんで行列ができる。お一人様1個まで。
サクサクとした咀嚼音のASMR動画をきっかけにTikTokで人気になっているそうで、入手の困難さに拍車がかかっている。なにがどこでどう広がるか予想できない時代。しかし、転売だけはどうにかならないものか。
・TikTok発、Z世代からブレイク 宮城の“激レア”銘菓「霜ばしら」 入荷即売れ切れの影に深刻な転売問題(2024/1/8 ORICON NEWS)

絹の織物のような光沢のある見た目。中国の飴菓子「龍の髭(龍鬚糖)」に少し似ているが、あちらは繭玉のような姿で綿あめのような口当たり。水飴を何度も伸ばして細い糸状にする製造工程は、どちらも共通していそうだ。
口にいれると、サクリとした軽い食感、淡雪のように一瞬で消えてなくなる繊細さ。
缶に充填されているのは、繊細な飴を守り、湿気を除くための「らくがん粉」。軽く炒って玄米茶のように飲むもよし、揚げ物の衣に使うもよし。
「霜ばしら」 と 「晒よし飴」 の違い
以前は九重本舗玉澤さんで、「霜ばしら」と「晒(さらし)よし飴」の2種類を販売していた。今は霜ばしらのみになったようだ。
リニューアル前の九重本舗さんのサイトには、よく質問されるために「霜ばしら」と「晒よし飴」の違いについての案内があった。
「霜ばしら」と「晒よし飴」の違いは・・・?
『晒よし飴』の原型となった飴菓子は江戸時代・仙台藩家中において創製されたもので、以来、平成の世となりました現代まで、父子相伝の製菓技法は一貫して守られ続けております。
対する『霜ばしら』は、大正~昭和期の折、上記の『晒よし飴』の製菓技法へお客様の時代嗜好の要求に合わせた《くちどけ と 大きさ》を製造過程で見直した結果、新たに創製されました飴菓子でございます。『晒よし飴』と『霜ばしら』の1個あたりの大きさを比較しますと『晒よし飴』が2まわり程大きいサイズとなり、また、お召し上がりの際のくちどけ具合もサイズに比例致しておりますので、味わいも異なって参ります。
仙台藩六十二万石の古風なイメージを放つ一回り大きな『晒よし飴』、対してより現代的に調製された一口大の『霜ばしら』とご理解いただきますとそれぞれの菓子の特徴が判断いただけるでしょうか。
両製品ともお客様よりご好評をいただいておりますが《くちどけ と 大きさ》がそれぞれ異なるため、召し上がる方のお好みによってご支持が分かれるようです。※出典:九重本舗 玉澤公式サイト ※サイトリニューアルにより閲覧不可
ちなみに晒よし飴は、宮城県柴田郡大河原町にある「元祖 晒よし飴本舗 市場家」の先祖の方が作り上げた菓子だそうだ。よしは、植物の「葦」(よし)のこと。
仙台駅のエスパルなどに店舗を展開している菓匠三全で、この市場家さんの晒しよし飴を取り扱っている。もしも遠方から来て、「霜ばしらを購入できなかった…」という方にはこちらをおすすめしたい。
- 元祖 晒よし飴本舗 市場家@宮城県柴田郡大河原町
- 菓匠三全 銘菓「晒よし飴」 ※市場家の「晒よし飴」を販売